株式会社ホンヤク社

 代表取締役社長 原田 真 氏

会社概要

当社は現会長の原田毅が設立し、今年で創業45年目になる翻訳会社です。
自動車メーカーの技術文書の翻訳受注からスタートし、現在は、工業・科学技術全般の分野の翻訳を中心に取り扱っています。メーカーや官公庁をはじめとする多様なお客様が取引先です。

株式会社ホンヤク社 様 HP:http://www.translatejapan.com/

Interview

求める翻訳者像はどのような方でしょうか。

まずは基礎的な翻訳力をお持ちの方です。基礎の定義は難しいのですが、原文に対して過不足なく忠実に翻訳できることだと当社では考えています。原文を忠実にターゲット言語に翻訳できる力がスタートラインとなり、そこからクライアントのニーズやその時の状況に合わせて足したり引いたりしていくことができると思います。

2つめは、訳文の質が安定していることです。これは翻訳能力の高さ低さではなく、いつ翻訳をお願いしても同程度の品質で訳文を納品していただけるということです。例えば、今回は訳文の品質が高かったけれど前回は低かったというのは、翻訳を依頼するうえでリスクになります。納品される訳文の品質が想像しやすいと翻訳をお願いしやすくなります。もちろん、状況やお客様のニーズによって異なる場合もありますが、当社でよくお願いする方は、安定感が高い方が多いですね。

3つめは、ビジネス感覚を併せ持っていることです。翻訳案件は納期、品質、価格に基づきますが、さらにその背景にはお客様のビジネスがあります。近年お客様のニーズが多様化してきており、求められるものはお客様や各案件で変わってきます。
翻訳者の方の中には高いプロ意識を持つ方が多いかと思いますが、それに加えてビジネス感覚も併せ持っていただき、フレキシブルにご相談させていただけると、翻訳会社としてもさらに仕事を依頼しやすくなるかと思います。

翻訳支援ツールに対する翻訳者の方々への希望はありますか。

そうですね。限られた時間で翻訳作業を効率化させるために、Tradosをはじめとした翻訳支援ツールや機械翻訳が発達してきているのだと思います。当社でもTradosを始め、memoQや他の翻訳支援ツールの導入にも積極的な姿勢を持っています。使用する翻訳支援ツールは案件内容やデータの性質に応じてプロジェクトマネージャーが最適なものを選択します。近年、翻訳支援ツールが用いられる分野も言語も広がってきているため、翻訳者の方も翻訳支援ツールに対する意識は高くなっているのではと想像しますが、そういったものに積極的な姿勢を見せてくれる方は当社でも重宝しますね。

現在注目している分野はございますか。

当社で売上規模が大きいマニュアルの多言語翻訳です。最近はCMS(Contents Management System・コンテンツ管理システム)でのドキュメント管理を行っているお客様も多くなり、DITAやXMLといったデータ形式による納品案件が増えています。その場合、従来のWord上書きのような形での翻訳作業ではなく、エンジニアリング処理を施したデータに対して翻訳支援ツールを使用して翻訳したりなど、翻訳工程もまったく違うものになります。翻訳会社内でも語学スキルとエンジニアリング知識の両方を用いてデータ処理や進行管理を行う必要が出てきており、翻訳者側でも特別な作業仕様に沿って翻訳を行ったりなど、従来とは違うPCスキルが求められてきています。こういった傾向は、さまざまな分野で今後強まると考えています。

御社の強みを教えてください。

3つあると考えています。1つめは、産業翻訳全般に幅広く対応できることです。前述のとおり、工業・科学技術全般を扱ってきた実績がありますので、さまざまな文書の翻訳に対応することができます。

2つめは、お客様のご要望やお問い合わせに対してタイムリーかつフレキシブルに対応できるよう、お客様一社につき弊社の専任の営業担当と制作担当を配置し、営業担当と制作担当の双方が窓口になっていることです。営業部門は価格や納期についてお客様とやりとりし、製作部門は当社の登録翻訳者やチェッカーとやりとりします。請け負った仕事に対する認識をお互いに共有することによって、部門間でのずれが解決し、スピーディーに対応できるようになりました。

3つめは、米国に現地法人を有していることです。この米国法人は平成25年に設立し、日本企業の米国における訴訟関連の翻訳を中心にサービスを提供してきました。最近では日系企業だけでなく米国の現地企業も対象として、工業・科学技術分野の翻訳も対応しています。弊社の登録翻訳者の方は日本法人であるホンヤク社のみならず、米国法人にも登録できるようになっていますので、翻訳者の方にとってはお仕事の可能性も広がるのではないかと思います。

御社は2015年にISO17100を取得されましたが、取得の経緯を教えてください。

ISO17100は取得の条件にあたり、組織体制・仕事のフロー・翻訳者やチェッカーに求められる要件がしっかりと定められています。この要件に従って翻訳工程を進めていくことで、翻訳会社としての力を向上できるのではないかと考えたためです。規格そのものの認知度が日本ではまだ低いからか「ISOに準拠した工程でお願いしたい」と明言されることはありませんが、お客様や社会に対しての信用度に徐々につながってきていると思います。お客様にも準拠したフローで翻訳を行っているとセールスの一環としてお話ができますし、1つの営業品目として売ることができると思っています。

今後のビジョンをお聞かせください。

弊社の強みである工業・科学技術分野のサービスをより強化していきたいと考えています。お取引先のお客様を増やしたいですし、お客様のご要望にお応えできるように、人材投資、設備投資など必要なものは積極的に行っていきたいと考えています。2020年をめどに翻訳業界の中で常に上位5位に入っているような会社になりたいですね。

最後にこれから翻訳者を目指す方へメッセージをお願いします。

以前と比べ時代は変わってきていますが、海外と関係を保ちつつ経済発展をしていくのはこれからも不変ですし、付随する翻訳需要もなくならないと思います。
翻訳者と翻訳会社は協力関係にありパートナーでもあります。お互いが協力し成長していく関係であると思います。
私自身、翻訳という仕事は社会貢献度が高い仕事だと感じています。一般に公開されないドキュメントもありますが、たとえば、官公庁の場合のプレスリリースや大臣のスピーチ原稿などの翻訳案件の場合、国を代表して発信するため、格調高い文章に仕上げなければなりません。このように世の中の流れやビジネスに密接に携わっていて、大きな影響を与えている仕事だと感じています。
翻訳という仕事は縁の下の力持ちで目立たないこともありますが、影響力もあり社会貢献度の大きい仕事です。翻訳者の方々、これから翻訳者を目指される方々には、ぜひ胸を張ってお仕事や勉強を頑張っていただきたいと思います。