007ノーベル平和賞の受賞者でソーシャル・ビジネスを展開するグラミン銀行総裁のムハマド・ユヌス博士とグラミングループ一行と本年7月18日(日)夜、ILCが所属する滋慶学園グループの一員として大阪でじっくり会談する機会を得た。

 ユヌス氏は、バングラディッシュなどでの無担保少額融資(マイクロクレジット)の実施を通じ、農村部の貧しい人々、特にイスラム世界で虐げられている女性層を中心に自立支援を推進、世界の貧困軽減に多大な貢献をした功績により、2006年度のノーベル平和賞を受賞された。
ユヌス氏は日本経団連などの講演会や、ユニクロを展開するファーストリテイリング社とのソーシャル・ビジネス合弁事業などのために来日。この日も関西学院大の名誉博士号授与式に参加、さらに記念講演をこなすなど超過密スケジュールを調整して駆けつけるなど、多忙なスケジュールをぬっての会談となった。私は、大阪で博士にお会いする前に、東京でのシンポジウムにも参加した。ユヌス博士の基調講演とフランスの会社の経営責任者による講演はすばらしかった。その講演の後、ご両名を含めてパネルデスカッションが行われた。日本側パネリストとのデスカッションが、十分にかみ合ったものではなかった。残念であった。職業柄、同時通訳者の能力をチェックしてみた。一人の通訳者は、すこぶる優秀であった。どのスクールの卒業生か、どの程度、通訳料をもらっているのだろうか、前もってペーパーを渡されていたのだろうかなど、いらぬことも考えていた。話を戻そう。

 ユヌス博士は、世界に存在する貧困と戦い続けている人です。他の慈善事業家や国連や世銀などの貧困問題の専門機関とは、異なったアプローチで貧困を撲滅しようとしている。彼は、強固な哲学を持った企業家であり、経営者である。政府資金や寄付に頼りきった団体のリーダーとは異なる。私は、彼といろいろなことを直接話し、容易に感じた。この人はオーナー型経営者だ。そして、ソーシャル・ビジネスの相手方を発掘するためトップ営業で海外を飛びまわっている。彼は、マイクロクレジットやソーシャル・ビジネスを通して貧困層にある人々を自立させることを目標にしている。だから、ソーシャル・ビジネスは持続可能な事業でなければならない。つまり収益を出し、継続できる事業でなければならない。もちろん事業の大前提として、貧困問題を解決できる事業であるという条件がある。利益追求型の通常のビジネスとの違いとして、ビジネスに出資した者は出資分を回収できるが、それ以上の配当や利益の享受はできない。ソーシャル・ビジネスの余剰金は、貧困問題を解決するため、そのビジネスの拡大のため再投資されるか、他のソーシャル・ビジネスに投資される。通常のビジネスとはルールが異なるのだ。異なるルールの下で、いかに事業を展開できるかである。だから違った発想で事業を推進できなければ、ソーシャル・ビジネスとは呼ばれない。従来の政府支援、公的資金、寄付に頼った事業とは異なり、ソーシャル・ビジネスは、自立した事業でなければならないのだ。詳しくは、ユヌス博士の著書「Creating a World Without Poverty」と「Building Social Business」で勉強のこと。前者は翻訳本も出ているが、ILC受講生は英語原典で読むこと。よろしいですね。とても読みやすい英文です。Writingの勉強にもなりますから。
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