修了生

拙い中国語であっても、こちらから積極的に話しかけていくことが、より良いコミュニケーションの構築につながる重要な要素になると考えています。

外資系ITサービス企業の代表取締役社長。
ILCでは中国語研修を受講。

貴社の概要について教えてください。

私どもの会社は、広い意味でいうとIT企業です。
特徴として、サービスの拠点を主にインドと中国に置いている点が挙げられます。インドには現在約10万人、中国には約1,300人のエンジニアが在籍しており、こうした海外の人材を活用しながら、日本企業向けにITサービスを提供しています。

私は現在、本社がアメリカにある当社の日本法人において責任者を務めています。
日本国内の組織としては約150名の社員が在籍しており、そのうち100名ほどが外国籍のメンバーで日本人は比較的少ない構成になっています。日本人のエンジニアを新規採用するというよりは、インドや中国など海外拠点で活躍している優秀な人材が、業務上の必要に応じて一定期間日本に転籍して勤務するケースが圧倒的に多い形です。

多国籍の社員が働いているとのことですが、業務では英語や中国語を使用されていますか。

当社はアメリカ本社のもと、日本と同様にインド、中国にも現地法人があり、それぞれの拠点で勤務しているメンバーがプロジェクトベースで連携しながら業務を進めています。そのため、社内の公用語は基本的に英語です。

ただ実際の運用としては非常に柔軟で、日本人同士であれば日本語を使いますし、日本にいる外国籍メンバーも日本語が堪能な場合は日本語でコミュニケーションを取ることもあります。

一方で、会議の場に英語ができないメンバーが一人でも入れば英語に切り替わりますし、逆に全員が日本語で問題ない場合は日本語で進行することもあります。さらに途中でメンバーの出入りがあれば、その時点で言語が切り替わることも珍しくありません。

つまり固定的にどちらか一方ということではなく、その場の状況や参加者に応じて、日本語と英語を柔軟に使い分けながら業務を進めているのが実態です。

中国語は自己学習されていたと伺っています。今回弊社では対面で授業をご受講いただいていますが、対面授業について効果的だと感じられた点やメリットはございましたか。

そうですね、メリットは多いと感じています。幼い頃であれば、外国語の学習にも純粋な気持ちで向き合えたと思いますが、年齢を重ねた今、単調な語学学習を続けるのは正直なところ難しさもあります。もちろん必要性は理解しているものの、それだけでは継続するのが難しいと感じます。その点、実際に対面で指導を受けると、言葉が生きた形で伝わってくる感覚があります。

これは私個人に限らず、中国語を学ぶ多くの日本人に共通する課題だと思いますが、特に中国語の発音の難しさは大きな壁です。日本語にはない音が多く、さらに中国語ではわずかな違いでも四声などによって意味が全く変わってしまいます。そのため、独学では誤りに気づきにくいと思います。対面で指導を受けることで、発音やイントネーションといった自分では気づきにくい部分をその場で修正してもらえます。この点は非常に大きなメリットだと感じています。

また、単に文章や単語を暗記するだけでは、どうしても単調で辛く感じてしまいます。そのため、言葉の背景や成り立ち、とりわけ中国語特有の言い回しや表現について説明してもらえると、納得感が生まれます。
年齢を重ねた分、物事を理屈で捉えがちになっている面もあり、なかなか簡単ではありません。だからこそ、背景や理由を丁寧に補足してもらえることで、より深い理解につながると思います。

先生の教え方はいかがですか。

やはり人柄による部分が大きいと感じますが、非常にフレンドリーな方です。本来は大変立派な先生でいらっしゃいますが、そうした堅さを感じさせることがなく、とても明るく親しみやすい印象があります。授業というのはどうしてもこちらも身構えてしまいがちですが、そうした雰囲気が良い意味で和らぐため、安心して授業に参加しやすいと感じています。

また、中国語の背景には中国の文化や時間の感覚といったものがあり、そうした点についても折に触れて教えていただけるため、非常に理解しやすいと感じています。
先生が取り入れている早口言葉などの工夫も印象的です。いわゆる中国語らしい音やリズムが自然と身につくようになっており、学習そのものがとても興味深く、楽しいものになっていると感じています。

本研修を受講したことで、ビジネスや中国出身の部下の方との接し方に何か変化はありましたか。

現時点では中国語を実務で十分に活用できるレベルにはまだ達していません。
例えば、現地での交流の場としてカラオケに行く機会もありましたが、そこまで踏み込んだコミュニケーションには至らず、まだその手前の段階にあると感じています。
というのも、先ほどお話した通り、社内に限って言えば英語が公用語であり、日本向けの業務に携わる中国人メンバーの多くは日本語にも対応できるため、仕事自体は英語や日本語である程度成り立ってしまうのが実情です。

しかし、英語も日本語も彼らにとっては外国語です。そのため、常に外国語でコミュニケーションを取るというのは、たとえるならサッカーで言えば常にアウェーでプレーしているようなもので、知らず知らずのうちにストレスやフラストレーションが溜まってしまう側面もあると思います。だからこそ、こちらから相手の母語である中国語の世界に少しでも踏み込んでいくことで、相手の反応が大きく変わるのではないかと感じています。これが中国語を学んでいる大きな理由です。

今後は、上海に加えて大連でも事業を拡大し、新たなメンバーも増えていく予定です。そうした中で、たとえ拙い中国語であっても、こちらから積極的に話しかけていくことが、より良いコミュニケーションの構築につながる重要な要素になると考えています。

お忙しい中で、どのように学習時間を確保されていますか。

週に2回授業を受けているため、間に週末を挟む場合は、週末の時間をある程度学習に充てています。一方で、例えば木曜日の授業に向けては、火曜・水曜と限られた時間しかないため、なかなか余裕があるわけではありません。平日はまとまった時間を確保するのが難しいため、日々の合間の時間を活用しながら、継続して学習に取り組んでいます。十分な時間が確保できているとは言えませんが、限られた時間の中で何とかやりくりしているというのが実情です。

英語や中国語に限らず、語学学習には伸びを実感しやすい時期と、そうでない時期があると感じています。学習を始めたばかりの頃は、ゼロからのスタートということもあり、自分でも驚くほど一気に伸びた実感がありますが、ある程度のレベルに達すると、確実に伸びてはいるものの、その変化は非常に緩やかになります。その過程でフラストレーションが溜まり、そこでやめてしまうのか、それとも乗り越えて次の段階に進むのかが、一つの分かれ目になるのではないかと思います。そうした迷いや、「このやり方で正しいのか」といった不安についても、講師の方から前向きなフィードバックをいただけるのは大きな支えになっています。

また、年齢とともに記憶力の変化も感じており、せっかく覚えたことでも忘れてしまうことがあります。いわば穴の空いたバケツに水を注いでいるような感覚もありますが、それでも繰り返し積み重ねていくことが大切だと感じています。

教科書についてはいかがですか。

教科書については、各ユニットが比較的コンパクトにまとまっていて、一つひとつにストーリー性がある点が学習しやすいと感じています。そのため、何日分・何週間分とまとめて進めるのではなく、ユニット単位、あるいは場合によってはその半分といった区切りで復習しやすい構成になっています。

中国語の学習とは少し離れますが、多様なグローバル人材が集まる中で、それをまとめていくことにはご苦労も多いのではないかと思います。そうした環境で、どのようにマネジメントを行い、組織としてうまく機能させていくのでしょうか。

なかなか難しいですよね。やはり国や文化が違えば、背景や価値観も異なりますし、それをすべて理解するのは簡単ではありません。

ただ、少なくとも相手の国の言葉や習慣について、最低限の知識を持っておくことは重要だと感じます。
例えばインドの食文化は日本と異なりますし、宗教が日常生活に深く根付いていたり、日本ではあまり意識されない価値観が生活の中心になっていたりする場合もあります。そうした違いを前提にしながら、まずは基本的な常識や背景を学んでいくことが必要だと思います。実際には、すべてを完全に理解することは難しく、失敗や試行錯誤を重ねながら身につけていく面もあります。最終的には、国籍や文化の違いを超えて、組織として共通の目的を持っているわけですから、その実現に向けてどう調整していくかが重要になってきます。

最近の中国やインドの人材は総じて上昇志向が強く、その点はしっかり意識しておかないと、モチベーションの低下や意見の衝突につながることもありますので、一定の配慮は必要だと感じます。

インドでは日本の古い映画、特に黒澤明作品がよく知られているとインド出身の社員から聞いたことがあります。『七人の侍』は非常に人気があり、そこに描かれるリーダー像や責任感が、日本のリーダーシップとして強く印象づけられているようです。ただ、そのイメージが必ずしも日本の現実と完全に一致しているわけではないので、面白さと同時に少しギャップも感じるところです。

いずれにしても、インドでも中国でも共通しているのは、リーダーには強さや決断力が求められるという点です。どんな状況でもぶれずに、結果に向かって責任を持つ姿勢が重視される傾向は、日本以上に明確な場合もあると感じます。ですから、組織の上に立つ人というのは、人格的に上下があるという意味ではなく、あくまで役割としての責任を持っている存在だと思います。その立場にある以上は、しっかりと判断し、決めるべきときには決めるという姿勢が求められますし、それが曖昧になると組織としての求心力が弱まってしまう面もあります。リーダーとしての“力”のようなものを周囲は見ているわけで、決断の場面で躊躇が続くと信頼を失うことにもつながりかねません。

そのため、重要な局面では「これでいく」と明確に意思表示をすることが必要になります。ただし、それだけで十分というわけではなく、その決定には必ず合理的な説明が伴っていなければなりません。なぜそう判断したのか、どういう理由でその結論に至ったのかを丁寧に伝えることが重要です。一方的なトップダウンではなく、納得感のある説明を通じて組織を動かしていくことが求められますし、日本的な組織運営においては特に、そのプロセスが非常に重要になると感じます。

大変勉強になります。

グローバルに活躍されている方や、これからグローバルリーダーになろうという方々は、英語ができる方が多いと思います。このような方々の中には、英語に加えて中国語を学ばれる方もいらっしゃいますが、社長からそういった方々へのメッセージをいただけますでしょうか。

若い方はバイタリティもあり、言われなくてもどんどん取り組む方も多いので、特別に何かを強調する必要はないかと思います。

ただ、今は中国の若い人たちと一緒に仕事をする機会が多く、彼らを見ていると、英語は基本として身につけたうえで、日本語に加えてフランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語といったように、複数の言語を積極的に学び、使っている人が非常に多いと感じます。いわゆる「トリリンガル」ですね。母語である中国語に加えて英語、さらにプラス1、プラス2といった形で言語を広げている印象です。

ですから、日本の若い方も、まずは英語が中心になると思いますが、中国の存在感は今後ますます高まることはあっても、弱まることは考えにくいと思います。特に日本にとって中国は隣国であり、台湾や香港、シンガポールなども含めれば、中国語圏の広がりは非常に大きいものがあります。その意味で、中国語を理解しておくことは大きなプラスになるはずです。

また、中国語はビジネスだけに限らず、学ぶことで日本との文化的なつながりにも気づくことができます。漢字をはじめとした共通点も多く、多少形が変わっているとはいえ、意味を類推できる部分も少なくありません。文法や発音は異なるものの、中国語の文章に触れることで、日本の文化や思想が中国から長い時間をかけて影響を受けてきたことにも改めて気づかされます。千年以上にわたる相互の関係の中で、日本の文化形成にも中国の影響が深くあるわけです。

そう考えると、中国語を学ぶことは単に語学力を高めるだけでなく、中国の文化への理解を深めると同時に、日本自身の文化への理解を見直すきっかけにもなります。その意味で、非常に良い循環を生む学びだと思います。

お忙しいところ大変貴重なお話をありがとうございました。