ILC東京校では、9月9日(日)翻訳スペシャルデーを開催し、第1部では、弁理士であり特許翻訳者として活躍されている奥田百子氏を講師にお招きし、「弁理士・特許翻訳者が語る~求められる特許翻訳者になるには~」という表題で講演をして頂きました。



講演では、最初に奥田氏が弁理士・特許翻訳者としてのキャリアを歩むに至った経緯をお話しいただきました。大学での弁理士という職業との出会いから、国際特許事務所でコレポンの必要性から学校に通いドイツ語を習得されたこと、資格専門学校での講座や企業研修のテキスト作成が文章力向上につながったこと、特許翻訳との出会い、電気の専門学校に2年通い、IT、通信、画像処理などを専門とされていることなど様々なことをお聞かせいただきました。奥田氏のこれまでの様々なご経験、また未知の分野の学習に対する意欲的な姿勢が、弁理士として、また特許翻訳者として幅広いご活躍をされている理由であるという印象を強く受けました。



次に、「よく使う表現Best 10」として、特許翻訳で頻出する英語の10の表現を、それを日本語にする際のコツ・注意点を交えてご紹介いただきました。例えば高校英語でおなじみの“~so that…”「…するように~する」が意外に技術翻訳で使われており、その際は結果を表すように「…である。その結果~である」と和訳されることが多いこと、特許の性質上、権利の範囲を狭めないため“desirably,” “preferably”など「好ましい」に該当する表現やmay「~してもよい」が多用されるなど、一般的な文章中にも見られる表現を、特許翻訳者ならではの視点で解説していただきました。




続いて、特許申請の一連の流れを対応する英語表現を交えてご説明いただきました。その後2011年9月に改正された米国特許法に関して、公表・出願のタイミングによって、米国の先公表主義と組み合わせた先願主義、および日本の先願主義の場合で特許されるか否かについて、例を用いてご説明いただきました。最後に、アップル社とサムスン社の訴訟について簡単にお話しいただき、この結果、特許を巡る訴訟も増えるという見解を示されました。これからの特許翻訳者の仕事として、特許明細書以外に裁判資料の翻訳の需要も高まるので、是非特許翻訳者を目指してくださいと特許翻訳者を目指す方々にエールを頂きました。

全体として、これから「求められる特許翻訳者」とは、進歩する技術に対応する研究熱心さとリサーチスキルをもち、なおかつ法律に関する知識を兼ね備えた人材であり、そのような翻訳者には、特許明細書だけにとどまらず幅広い活躍のチャンスを掴んでいくことができるという印象を強く受けたセミナーでした。

ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。