皆さんこんにちは。
ILC国際語学センターです。
「ILCの教室では実際どんな授業が行われているのでしょうか?」、「授業や学校の雰囲気がどんな感じか気になる!」という声にお応えして、各翻訳コースの授業の様子をレポートしていきます!

今回はメディカル翻訳初級コースを紹介します。

--------------------------------------------------------------------------------------
メディカル翻訳初級コースは、医薬翻訳に必要な専門知識と翻訳力をバランスよく身につけることを目指す初学者向けの講座です。
翻訳の演習を通じて医学の知識と英語力を効率よく身につけます。ボキャブラリーや文法知識を深めるだけでなく、文脈を正しく読んで、正確で自然な訳文を書く技術を修得します。また、インターネットを使った専門用語の調査、パソコンによる効率のよい翻訳作業など、現在の翻訳業務に欠かせない技能もカバーします。

専門知識と翻訳スキルを並行して習得できるため、医薬分野の知識がない人でも始められる講座として人気が高いコースです。


今回の演習は、二次性細菌性肺炎について述べた英文が翻訳課題として取り上げられました。課題文の分量はA4用紙で1枚程度。受講生の方からあらかじめ訳文を提出していただき、授業開始前に添削済みの課題と担当講師の吉田先生の訳例、および翻訳のポイントをまとめたプリントが配られます。

授業はまず、インフルエンザウイルスの構造の解説から始まりました。
課題文の中に登場する〈H1N1〉は、A型インフルエンザウイルスの型を示しており、これはヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)の組み合わせ144種類の中の一つとのこと。吉田先生は、製薬会社のウェブサイト上の情報を引用しながら丁寧な説明を加えていきます。

メディカル分野に限らず実務翻訳では、翻訳スキルとともに背景知識を備えることが重要になってきますが、吉田先生の指導はそうした背景知識の習得の仕方やリサーチの方法にまでおよびます。
製薬会社や研究機関のウェブサイトのほか、最近は動画投稿サイトでもさまざまな動画が見られるため、医学や生物学の基礎知識を得るのに活用できます。「特に初見の医学用語を調べる時は、単語の意味や使い方に加え発音まで覚えられるので、動画の利用価値は高いです。学習の中に積極的に取り入れるとよいでしょう」とのアドバイスがありました。

授業は翻訳課題の解説へと進み、まずは比較級の訳し方が取り上げられました。受講生の方はsecondary bacterial infections … are a more common cause of pneumoniaを「二次細菌感染は肺炎のより多い原因である」と訳しがちだが、メディカル翻訳ではこの訳文は不適切とのこと。吉田先生は、「『より』を使うのであれば、『~より…』というように比較の対象を明示して使うべき」とし、比較級の文で「より」を曖昧に使うことへの注意を促していました。この例文の場合、「二次細菌感染のほうが肺炎の原因として多い」という形にすればmoreのニュアンスを表すことができ、自然な日本語にまとめることができると訳例を示しました。

次に吉田先生が説明したのは、メディカル文書に頻出する動詞としてあげられるindicate、suggest、demonstrateなどの動詞にthat節が続く構文の訳し方です。例文Retrospective analysis of … indicated that most of these people also had a bacterial infection.には、①「~分析は、これらの人の大多数が細菌にも感染していたことを示した」、②「~分析では、これらの人の大多数は細菌にも感染していたことが示された」、③「~分析によると、これらの人の大多数は細菌にも感染していた」などの訳文が考えられますが、それぞれの文に構造上の特徴があります。
吉田先生は、「直訳の①は、述部の中にさらに主部と述部があるという入れ子構造になっていて読みにくい。受け身にすることで①の欠点を改善したのが②。③は読みやすい日本語ですっきりまとまっています。動詞indicateの訳語が表には出ていないが、訳抜けと判断されることはないです」などと丁寧な解説を加え、メディカル文書にも日本語としての読みやすさが求められることを説明されていました。

その後は次回課題のglossary(用語集)の説明の時間となり、新しい医学用語の解説がすんだところで授業は終了しました。
--------------------------------------------------------------------------------------

メディカル翻訳初級コースの詳細はこちら>>