株式会社ホンヤク社 × ILC国際語学センター共同講座 「ポストエディット講座」 開催報告


<概要>
ポストエディットとは、機械翻訳やAI翻訳により出力した訳文を人間の手で修正し、正しい翻訳物に仕上げる作業です。近年、機機械翻訳やAI翻訳が著しく進化しており、ポストエディットに対応できる人材の需要も高まってきています。そのため、これからフリーランス翻訳者を目指す方にとって、ポストエディットにも対応できることは強みとなります。
本講座は、ポストエディットを行ううえで必要とされる基本的な知識とスキルを学ぶことを目的とし、株式会社ホンヤク社様と共同講座として開催されました。
開催日時:2021/11/ 6、11/13、11/20、11/27 土曜13:00-14:30 (全4回)
開催方法:Zoomを使ったオンライン授業(ライブ配信)
担当講師:株式会社ホンヤク社 ビジネスデベロップメント部部長 成田崇宏氏、品質管理担当 菅井麻子氏
講座詳細:https://www.ilc-japan.com/tokyo/archives/22135

<開催報告>
本講座は、ILC実務翻訳プログラムの受講生・卒業生のほか、社内翻訳者の方やフリーランス翻訳者の方など、合計20名にご受講いただきました。Zoomを使ったオンライン授業で開催し、日本全国からご受講いただきました。

第1回目の授業では、「翻訳業界・翻訳会社におけるポストエディットの今」というテーマで、成田氏にご講義いただきました。

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授業の前半では、機械翻訳の歴史や変遷に関するお話でした。機械翻訳は日々進化していますが、訳文の品質に問題が見られるケースも依然としてあり、機械翻訳の特性を理解したうえで、ポストエディットに取り組む必要があるとお話がありました。
授業の後半では、翻訳者がポストエディット案件を引き受けるにあたり、翻訳会社へ確認すべきことや気を付けるポイントについて説明いただきました。
授業の最後には、機械翻訳とポストエディットが、翻訳会社、翻訳者、クライアントの「三方良し」の良いサービスとなりうるように、良い運用が重要になるとお話がありました。

第2回目から第4回目の授業では、実践講座としてポストエディットに必要なスキルを学習しました。受講生の方々には各回の授業の前に、ポストエディットの課題に取り組んでいただきました。課題は工業・科学技術・ビジネス分野など多岐にわたる文書から出題され、皆様が提出した訳文は菅井氏に添削後返却していただきました。

授業では課題の解説を通じて、ポストエディット作業を行ううえで押さえておくべきポイントについて具体的に示されました。

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訳抜けや訳し過ぎ、誤字脱字、数値ミスなど必ず直さなければならないポイントはもちろん、機械翻訳が苦手な文章構造や係り受け、人による翻訳ではなしえない不自然・不適切な訳出の修正など、応用レベルで修正するポイントについても実践的かつ具体的に解説いただきました。

ポストエディットの作業のなかには、機械が翻訳した訳文にどこまで修正を加えるかの判断が難しい場合があります。授業中にも、「どこまで訳文を修正すべきかというさじ加減が分からなかった」や「このように修正するのはポストエディットとしては問題ないか」というご質問を多くいただきました。

成田氏や菅井氏からは、定量的な線引きは難しいが、「文章全体で見たときに、統一されていないと誤訳とみなされてしまう用語や表現があった場合は修正したほうがいい」、「読み手の理解に誤解や混乱を招いてしまう可能性がある文章は修正したほうがいい」とアドバイスをいただきました。
受講生の方からは、「ポストエディットの作業方法を知ることができた」、「機械翻訳の得意な点と弱点が分かった」などの感想をいただきました。

オンラインでの画面越しからも、皆さんが熱心に講義を聞いている様子が見受けられました。授業での質疑応答も受講生の方から多くの質問をいただき、ポストエディットへの高い関心がうかがえました。

【受講生の感想】
・ポストエディットは実務でも携わったことがありますが、あくまで自己流で行っていたので、作業をして納品しても、果たしてこの成果品で良いのだろうかと不安になる事がありました。今回、この講座の案内を拝見して、一から体系的に学んでみたいと思い受講しました。また、オンラインで受講できたること、翻訳会社の方から、翻訳業界についての現場の声やアドバイスをいただけたというのも、とても魅力的でした。

・今現在そしてこれからも需要がますます増えるであろう 機械翻訳+ポストエディット(MTPE)、また大きな枠で翻訳というお仕事をする上での基本的なことを私のような初心者向けにもわかりやすく教えて頂ける機会を設けて頂いたこと、大変感謝しております。

・翻訳会社の方から業界の動向を聞けたことと、MT 翻訳、PE と人手翻訳を比べて見ることができ参考になりました。

・ポストエディットに関して、どこまで修正し、どこまで残すかというところ。講師の方がそこの線引きを示して、理由もきちんと説明してくださったのが良かったです。
また、ポストエディットとの比較で人手翻訳の例も挙げていただいたので、翻訳という仕事が全体的に把握できました。

ご受講いただいた皆様ありがとうございました。
ILCでは、翻訳者を目指す方に役立つ講座やセミナーを今後も開催してまいります。