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プロの翻訳者になるためには、避けて通れないのがトライアル合格。
一般的な試験と違って、各会社によって難易度も内容も異なってくるトライアルですが、
いったい皆さんどうやって勉強をされてきたのでしょうか。

そんな皆さんの疑問にお答えすべく、翻訳コースを修了されてトライアルに挑戦・見事合格された方々へ、
合格にあたっての勉強方法などをお聞きしました!

第2回目は、ビジネス一般文書翻訳を修了された方からです。

*ビジネス一般文書翻訳コース修了生 川口 豊和さん*

Q1.トライアル受験に備えてどんな勉強をされましたか?

ビジネスのバックグラウンドがありましたので、ビジネス全般を対象とする講座を選択しました。社内文書や広告文、プレスリリース、機器マニュアルなど会社業務全般にわたる幅広い材料を基に、日英、英日両面から翻訳の練習をしてきました。翻訳にあたっては、原文を理解するために綿密な事前リサーチを行うことを習慣としてきました。このため、訳文作成時間の4、5倍の時間をリサーチに費やしたと思います。
現役の翻訳者の講義には翻訳のキーポイントとなることがたくさんありましたので、これを整理してきました。今でも、常に参照するようにしています。また、課題添削で指摘を受けた表現についても自作の「翻訳改善集」(Before and After)にまとめ、その後の翻訳に役立てています。

前職は何をされていましたか?

長年、企業で海外事業展開に携わってきました。仕事の上で英語を使う機会はありましたが、訳す作業をしたことはありませんでした。いまさらながら、翻訳の難しさを実感しています。

苦労した点、大変だと思う点を教えてください。

トライアルの課題文章がどのような性格のものか、また、その文章がどういう人たちを対象としたものかを把握、或いは、想定することが翻訳の出発点になると思います。それによって、原文に極めて忠実に訳すべきか、或いは、原文の意図をくみ取って言い換え、補足、省略が許されるものかどうか、その判断には苦労しました。

次に、トライアル課題の中には専門的な知識を要するものもありましたので、内容の把握に労力を要しました。日本語の単語を英語の単語に(或いは、英語の単語を日本語の単語に)置き換えるだけで済ませることができるかもしれませんが、少なくとも、原文の主題について基礎的な知識を得ておくことが必要だと思います。時間がかかりましたが、むしろ、「急がば回れ」の気持ちで取り組みました。

トライアルでは意図的に誤りが埋め込まれていることもあると聞いていましたので、原文を鵜呑みにせず、リサーチで得た基礎知識や常識を基に原文に矛盾や誤りがないかをチェックすることに神経を使いました。

フリーランスの1番の魅力を教えてください。

翻訳対象分野を専門化することでその分野の翻訳能力を深めることができる一方、その他多くの分野を経験することで知識の幅を広げることができると思います。また、言葉の問題だけではなく、物事に対する関心の幅が広がるようにも思います。

これから翻訳の勉強を始めようという方に、メッセージまたはアドバイスをお願いします。

日英翻訳、英日翻訳ともに日本語の能力がキーとなることを痛感させられています。特段、日本語の勉強をしたことがない人が多いのではないでしょうか。日本語の構造を理解することは、文法の異なる英語の翻訳には大変役立つものと思います。日本語は奥が深いので、原文を読んで直ぐに翻訳に取り掛からないほうが良いと思います。何度も原文を読み、「てにをは」を含め、一語一語、筆者がなぜその言葉を使ったのかを考えることが筆者の意図を正確に把握することになると思います。そうすることで、誤訳を避けることができることは勿論、スムーズな流れの訳文にすることができると思います。

辞書についてですが、和英辞書は参考にする程度が良いと思います。辞書に書いてある日本語の名詞を英語の名詞に置き換えたものはほとんど使えないと考えた方がいいでしょう。名詞を動詞化、動詞を名詞化した表現を身につけることで表現の幅が広がります。また、パラフレーズの練習は頭を柔らかくする上で有効です。

私は翻訳を「大人のパズル」として楽しんでいます。思ったような表現が頭に浮かんだり、選んだ表現が適切であったことを英英辞書で確認できたりした時などは、パズルが解けたような喜びがあります。ぜひ、「大人のパズル」にはまってください。

ご協力いただきましてありがとうございました。
次回は特許日英翻訳コース修了生の声を掲載予定です!