ILCでは、3月10日(日)に翻訳スペシャルDayを開催いたしました。

第一部のパネルディスカッションでは、翻訳会社実務者の方によるパネルディスカッションを開催いたしました。
大手翻訳会社である株式会社翻訳センターの田嶌様、ドリームボックス社 代表取締役 飯野様、また製薬会社で長年翻訳をされ、著書に『医薬品開発-承認申請-市販後業務のための 知っておきたい英単語・英語表現』、『医薬品開発部員のための和英/英和・翻訳辞典』を持つ内田たけみ様にパネラーとしてご参加いただきました。



セミナーでは、下記のようなトピックスをお話いただきました。

(1)翻訳業界の現状や需要
(2)翻訳会社・クライアントの方が求める理想的な翻訳者像
(英語レベルや求められる専門知識など)
(3)トライアルに合格する人としない人の境界線
(4)こんな翻訳者なら継続してお願いしたい
(5)翻訳者を目指す皆様へ一言

セミナーの中では、内田様による実際に治験翻訳のさいに使用できる医薬関連のウェブサイトや辞書、参考図書などのご紹介もいただけました。

セミナーのなかからいくつか抜粋してここでご紹介いたします。

近年の翻訳業界の現状や需要に何か変更はありましたか?


飯野様):経験からすると、例えばリーマンショックの様な事が起こって、金融業界の翻訳需要は長期的に見ると減ったのでしょうが、何か変化の直後には一時的に需要が増えるというのが産業翻訳の特色であり興味深い点です。
ある業界が不況で各企業とも緊縮財政に移行し、リストラが国内外資系企業に及ぶと、社員一人の負担が増える結果、翻訳外注が増えるということにも繋がるのです。そのさい、翻訳者を中に置くか外注するかという選択に迷う企業も多く、その時々で方針が変わるケースが見られます。そういった中で派遣翻訳者が増える傾向にあるのではないでしょうか。また、M&Aなどの影響により勝ち組企業の集中化が起きると市場的には厳しくなる要因になると思います。
また、医薬品業界の場合には国の規制や海外とのハーモナイゼーションの変化にも影響されます。

Q2.翻訳会社から見て、理想的な翻訳者像はありますか?


内田様):
製薬会社に勤めていたとき、和文英訳を外注したところ、とんでもない翻訳が納品されたんですね。翻訳会社の方に問い合わせたところ、翻訳者の方は、じつは長年日本にいるアメリカ人の方が翻訳したと言われたんですね。でもその方はメディカルの知識はまったくなかったんです。たとえ英語ネイティブの方が翻訳したといっても、ただ文字面だけを訳した文章になってしまいます。GCP、GLP、コモン・テクニカル・ドキュメントなどといった業界の知識を知っていない人が翻訳するよりも、業界の知識をもった日本人が翻訳したまあまあの訳文の方がよっぽどいいんですね。英語がいかにできているかというよりも、内容がしっかりバックグラウンドに基づいて翻訳されているかということが大切だと思います。ただすぐにバックグラウンドができるわけではありません。翻訳しながら、色々な資料を参考にしながら、経験を積んでいくということが必要になります。


Q3.翻訳者を目指している方へ一言お願いします。


田嶌様):
日本の翻訳需要ですが、機械翻訳やツールの導入で需要が減っているのでは、と心配されている方もいるかもしれませんが、日本国内だけで200億規模のまだ翻訳需要があると言われています。ですので、安心して翻訳者を目指してもらいたいなと思います。ここ数年、不景気にも関わらず翻訳業界自体はずっと伸び続けています。この傾向はまだ続くと思っていますので、ぜひ前向きに翻訳者になっていただけたらと思います。

飯野様):
翻訳者って大変な仕事だと思います。皆さんには、常に学ぶ姿勢、謙虚な姿勢を持ち続けて欲しいという事と、いろいろな本を読み、いろいろな文体、表現に触れて欲しいなと思います。
今、私の会社でよくお願いしている方のお一人は、翻訳という仕事を始められて3年で優秀な訳者へと成長されました。もちろん医薬関連のバックグラウンドはあるに越したことはありませんが、バックグラウンドがない方でも自分の勉強でカバーしている方はたくさんいらっしゃいます。大学が語学と関係ない学部を出た方でも、非常に優秀な方がいますので、一概にバックグラウンドがないといけないという訳ではありません。ぜひ頑張って稼げる翻訳者さんになってもらいたいと思います。

内田様):
バックグラウンドは、「もともとあるもの」というよりは、積み上げていって欲しいと思います。翻訳の経験をしながら、積み上げて積み重ねて豊かにしていって、それを応用にして翻訳につかっていただけたらと思います。経験を積み重ねていき、知識を豊富に持つことにつきると思います。その一助として、自分で「辞書」を作ることをお勧めします。また、あっちこっちにいくのではなく、「この専門にいこうかな」とある程度絞って、そこの専門性を高めていったほうが、いい翻訳者になれるんじゃないかなと思います。

★参加者の方の感想★
・翻訳会社の方のお話を直接伺う機会が得られ、大変良かったです。
トライアルの注意事項などお聞きでき、とても勉強になりました。
・トライアルを受ける前に、ぜひ聞いておくセミナーだと思った。
今日のお話を踏まえ、トライアルに挑戦していきたい。
・医薬品などの情報をたくさんいただくことができて、大満足です。ありがとうございました。
・内田様の役立つネット・刊行物リストは早速参照できる情報です!今日参加することができて本当に良かったです。