「あなたならどう英訳しますか?」。
日本語特有の表現や英訳しづらい日本語を題材に、英語ネイティブ翻訳者が和文英訳のコツを紹介していきます!

第4回目の課題は「次回はぜひとも弊社のこだわりの新商品を紹介させていただきます。」

皆さんどのように英訳されましたか?それでは訳例を見てみましょう!

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訳例:
1. I would like to describe one of our most distinctive new products at our next meeting.
2. I would very much like to present one of the products that we are most proud of at our next meeting.
3. I would like to offer a brief description of our unique new product at our next meeting.
4. I look forward to talking about one of our unique new products at our next meeting.


一つ大事なポイントは「introduce」「紹介する」という言葉は全ての訳例文に登場していません。
不可能ではないですが、「introduce」はどうしても「人を紹介する」「新しい考えやアイディアを紹介する」という使い方が主流です。
今回の課題文に対する英訳で「introduce」を使うことはどうしても少し不自然に感じますが、意味は十分に伝わります。

課題文3つのポイント:
1.「ぜひとも」を独立した言葉にすべきか、それか他のところで強調する言葉を入れるか。

「ぜひとも」を定訳のように「独立した言葉」として英訳するのは難しいですね。
それより「ぜひ~したい」という風に考えて、「I would like to」または「I would very much like to」を使うことを勧めます。
「I would very much like to」のほうが強い「意気込み」を表現しますが、「I would like to」だけでも十分に丁寧な表現です。

2.「こだわりの」という日本語独特の表現をどう英訳するのか。(直訳できるかそれに近いニュアンスの英語はあるのか)
「こだわりの」に相当するぴったりの英語もありません。
そうなりますと「こだわりの」に近い意味合いを持つ言葉を探す必要があります。
訳例では「distinctive」「特徴的」、「unique」「独特の」を使用していますが、
2つめの文では「that we are most proud of」「我々が最も誇りに思う」を使っています。
少し長い表現になっていますが、意外と日本語の「こだわりの」に近い意味を持っています。
英語の発想では「自社の商品を誇りに思う」という考え方はごく普通です。
(日本語では「プライド」が少し否定的なニュアンスを含む場合が多いですが、英語の「proud of~」はほとんどの場合肯定的な意味合いを持っています)

3. 全体を通して、相手が会社役員ということで、丁寧な英語が求められます。
特に最後の「紹介させていただきます」のところに注意しましょう。(「丁寧すぎる」にならないように注意する必要があります)


これは少し難しいところですね。日本語の「~させていただきます」は簡単に英訳できません。
「Please allow me to~」という表現はもちろんありますが、「許可を得たい」といったニュアンスがあるため相手は多分違和感を覚えると思います。
そして、実は「Please...」といった依頼の表現が実はあまり丁寧ではありません。
「~をしてください」のようなニュアンスだけで、丁寧とは言えない表現です。
一つの手は「With your permission,...」を使うことは可能ですが、丁寧すぎるという印象を与える確率が高いと思います。
従って、「I would very much like to」に留まっていいと思います。

訳例文1~3は全部丁寧な英語ですね。
例文4は少し砕けた言い方ですので、よく知っている中がいい人以外は使わないほうがいいと言えます。
また、例文4に関して「させていただきます」というニュアンスは弱いですね。

ダメな英訳例:
1. I’m going to describe our particular new product at our next meeting.
まず、「I’m going to」はこの場合上から目線の言葉になります、つまり相手の立場に配慮していない印象を与えます。
「こだわりに」として「particular」という英語が検索サイトによく出ますが、「特定の(個別の)」という意味で、
今回の「こだわりの」というニュアンスは含まれていないと思います。

2. I plan to discuss our special new product at our next meeting.
「I plan to」は上記の「I’m going to」と同じく、あまり丁寧と言えません。
自分の主張だけが表現され、相手の立場に配慮していない。

「こだわりの」を「special」と英訳するのは絶対ダメとは言えません。
場合や状況によって「意訳」として採用することは可能ですね。
しかし厳密な英訳を考えると「special」「特別な」の意味は「こだわりの」と少し違います。

3. I want to describe our fantastic new product at the next meeting.
「I want to」は正直あり得ないですね。一般的に「I want to」が子供が使うような英語です。
直接的かつ強い言葉ですね。大人なら「I would like to」に切り替えましょう。
また、「fantastic」は「凄い・実に素晴らしい」というニュアンスで、かなり砕けた言葉です。
取り引き相手の役員には使えません!(宣伝用のパンフなどでの使用は可能です)

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